2017年3月14日火曜日

建築家がマジメに考えた、サザエさん家に学ぶ“間取り術”


『サザエさん』磯野家の間取りにヒミツあり

「家を建てる時に一番大事なものは?」という質問に対して、一番多い答えが「団欒」です。広いリビング、ダイニングそしてオープンキッチンと団欒の舞台は揃ったのに、肝心な家族はバラバラで団欒できないと嘆く人もずいぶん多いのではないでしょうか。

国民的アニメ『サザエさん』の磯野家の間取りには、かつて日本人が最も大切にした「家族」に関する明確なメッセージがあります。昭和30年代の高度成長時代から40年を経て、個室重視型のプランから、今再び家族の触れ合いを重視する開放的なプランが求められている傾向にあります。磯野家の間取りから、今に伝えたいキーワードを拾ってみましょう。

●磯野家DATA
住所:世田谷区桜新町
構造:木造平屋建て
面積:延床約32坪
特徴:2世帯住宅
家族構成:波平(54歳)/フネ(50ン歳)/カツオ(11歳)/ワカメ(9歳)/フグ田マスオ(28歳)/サザエ(24歳)/タラオ(3歳)




◆磯野家は「茶の間を中心とした和の住まい」
・空間の柔軟性と融通性はあるがプライバシーに欠ける
・廊下が部屋への動線ではない(部屋と廊下がつながっていない)
・南側の縁側が外との、また家族とのコミュニケーションの場である
・台所、茶の間が北側でやや暗くなりがちである
・収納スペースが少ない
・老夫婦、若夫婦の寝室が日当りのよい位置にある
・比較的壁量が少ない、なおかつ引戸や引違い戸が多い
・水まわりのスペースに余裕がある

◆現代の一般的な家は「ダイニングキッチンを中心としたホテル型の住まい」
・個々のプライバシーは確保されているが空間の柔軟性は乏しい
・廊下が部屋への動線になる(廊下から各部屋に入る)
・南側に廊下や縁側をつくることはあまり見られない
・外とのコミュニケーションを遮断しがちである
・ダイニング、リビングは採光を重視する
・収納スペースを重視
・寝室や子ども部屋は2階にするプランがほとんどである
・比較的壁量は多く、開きドアが多い
・水まわりのスペースはできる限り経済設計をしている

そこで、「個」+「集」をつなげる緩衝帯(バッファゾーン)を取り入れ、磯野家の間取りを今風の新しい間取りに変えてみましょう。

ベテラン建築家・佐川旭の磯野家リフォーム案



客間6畳のスペースを中庭にしました。中庭をつくることでどの部屋にも光が降り注ぎ、とても気持ちの良い空間ができます。

「個」と「集」をつなぐ手法として「吹き抜け」「中庭」「半戸外のアウトドアルーム」「サンルーム+縁側」等のいわば緩衝帯があります。もちろんこれ以外にもキッチンの形式や階段の考え方も大切であります。これらに共通するのは“空間と空間がやわらかく自由につながる”という感覚です。家族の気配が感じられる距離感を空間がつくるのです。

今までの間取りは単に部屋数だけを確保し、壁で囲い、空間を遮断していました。機能や便利さだけの満足感だけでなく、間取りには豊かさをつくる遊びのスペースが大事なのです。間取りを考えるときにはぜひこの考え方を導入してほしいと思います。

世田谷の一等地に建つ磯野家。なんと磯野家にはクーラーがありません。広い縁側から気持ち良い風がよく通るのでしょう。居室を密閉しクーラーをガンガンかけているのは日本くらいでは!? 

クーラーの風と自然の風、どちらが体に優しいのか、どちらが地球に優しいのかは一目瞭然です。この違いに気付いていれば、「シックハウス法」も必要なかったでしょう。地球に優しい間取りを考えることも大切ですね。

<発行元のプレスリリースをそのまま転載しています>
転載元:livedoorNEWS

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